No.365 選択
煽り:鳴り響くコール!迫られる決断!
クラピカ(3人の王子から同時に連絡が…!誰に出るべきか…!?)
クラ(ベンジャミンは自身の兵士が殺されたことを知っている!)
クラ(つまり既に我々は戦争状態だと言っていい…!にもかかわらず)
クラ(次の刺客を送ったタイミングでこちらと話したがるのは何故だ…!?)
クラ(他の2名がこちらと接触を取りたがっている理由はおそらく同じ…!「ネンジュ
ウ」についての情報)
クラ(情報を集めようにもおそらく自分の兵士には念使いがいなかったのだろう)
クラ(両王子ともハンター協会員を雇わずに私設兵を準協会員扱いにして警護を増員し
ている!)
クラ(この事も仮説の正しさを裏付けている)
クラ(交渉したいのはやまやまだが…こちらは逆に両王子の情報が足りない)
クラ(わざわざ宣戦布告のためだけに連絡してくるとは思えない)
クラ(ベンジャミンと連絡を取り合ったという事実も他の王子へのプレッシャーになる
はず)
クラピカ「シマノ!外の兵士に少し待ってもらい交換台には第1王子につなぐ様に言っ
てくれ」
シマノ「…はい」
クラ「ビル!ドアで外の兵士を見張ってくれ」
クラ「交渉次第では即攻撃が始まるかも知れない、"凝"は?」
ビル「任せろ。何があっても食い止める」
クラ(操作系能力者を臭わせた事が効いたならばうかつには手出し出来ないはずだ)
クラ「もしもし」
チョウライ「非常に光栄だね。ベンジャミンでなく私を優先してくれるとは」
クラ(チョウライ!?)
シマノを睨み付けるクラピカ
シマノは無表情でクラピカを見つめ返す
チョウライ「差し支えなければ教えていただけるかな?なぜ第1王子ではなく私を選ん
だのかを…ね」
クラ「率直に申し上げると最も話が通じる方だと推察いたしました」
チョウ「ほう…一体何を根拠に?」
クラ「それは申し上げられません。なぜなら、おそらくはそちらが欲しがっておられる
情報」
クラ「ネンに関わる事ですので」
チョウ「…わかった本題に入ろう。こちらは察しの通り『ネン』とやらの情報を出来る
だけ欲しい」
チョウ「だがもちろん電話では機密の保持が担保されない。そこでだ」
チョウ「私の部屋への入室を許可しよう。栄誉と情報との交換だ。いかがかな?」
クラ(さすが王族の血を引く者。こちらが優位に立つ事は決して許さないわけだ)
クラ「有難く承ります…ただ一つ、ワブル王子とオイト王妃の動向をお許しいただけま
すか?」
チョウ「もちろんだとも大歓迎だよ」
チョウ「仮にも兄弟同士望んで争っているわけではない。それでは15分後にインターホ
ンを鳴らしたまえ」
「…交換台」
クラ「第1王子につないでくれ!」
「既に通信が切れております」
クラ(くっ…そ)
「ツベッパ王子様につなぎますか?」
クラ「すぐ頼む」
クラ「もしもしこちらはクラピカです」
マオール「ツベッパ王子直属マオール少尉だ」
マオール「ネンジュウの情報と引き換えに休戦協定を結ぶ用意がある。受けるかね?」
クラ「他の王子との兼ね合いは気にしないのか?」
マオール「我々は関知しない」
クラ「わかった受けよう」
マオール「この件は王子より全て私に一任されている」
マオール「一方的に協定を破る様なマネはしないがそちら次第で破棄を宣言する場合は
ある」
クラ「大丈夫だこちらも全く争いは望んでいない」
マオール「了解した。これから私がそちらに向かう」
クラ「…悪いが少し時間をずらしてもらえないか?」
マオール「言ったはずだ。我々はそちらの事情を一切関知しない」
緊張するクラピカ
マオール「我々はネンについての情報を持つ者が君だけとは考えていない」
マオール「そして協定は我々が情報を受け取った瞬間に結ばれる。理解したか?」
クラ(上等だ…!)
クラ「だが現在私達は第1王子の私設兵との間に問題を抱えていて扉の前にはその兵士
がいる」
クラ「第1王子の私設兵をさしおいて貴方を招き入れるのはもちろん可能だが」
クラ「その状況を第1王子がどう解釈するかは私達の関知するところではない。おわか
りか?」
マオール「…了解した。一時間後こちらから連絡する」
マオール「それまでに問題が解決していなければ協定の件は白紙に戻す」
通話終了
クラ「ビル、王妃を頼む」
ビル「ああ。あちらさん全く無反応だぞ」
クラ「シマノ私の目の前にいろ」
シマノ「…」
クラ「なぜベンジャミンではなくチョウライにつないだんだ?」
シマノ「…私も生き延びる為に最善を尽くしたいと思いました」
シマノ「ベンジャミン様は冷徹なお方。決して交渉や命乞いで考えを変えるお方ではご
ざいません」
シマノ「直接下々の者と話す事もいたしません。電話口にいたのはおそらくマイト曹長
でしょう」
シマノ「交渉は先程部下の死という形ですでに決裂しておりますからあちらの用件はた
だ一つでございます」
シマノ「雇用主に忠実な敵に敬意を表して死に様を選ばせる事」
クラ「…」
シマノ「死に方に興味はありません…私は生きたいのだから。それでチョウライ様につ
なげました」
シマノ「自ら受話器を持ち私達と直接交渉する程には寛容ですが後回しにされたら順番
を待たずに切る位には高慢…」
シマノ「出来たら殺し合いは避けたいと思いながらもいざとなればためらわない優しさ
と残酷さを併せ持つ方…」
シマノ「それが私のチョウライ様に対する印象です」
シマノ「故に機嫌を損ねず付き合ってさえいられれば少なくとも王子の数が絞られるま
では私達を標的にする事はないでしょう」
クラ「安全確保の為の優先連絡ということか…」
シマノ「はい。ツベッパ様は自ら電話に出るタイプではありませんが現在の国王制のあ
り方には厳しい意見を持っておられます」
シマノ「今回の戦いに参加されている理由は上位王子に国政を握られることを阻止する
為でございましょう」
シマノ「それが叶ったあかつきには現国王と折衝し下位王子達への恩赦を勝ち取ってく
ださるだけの政治力もあるかと」
シマノ「チョウライ様を優先して待たせたとしてもそれを屈辱と考える性格の方ではな
いと判断いたしました」
クラ(たしかに…ここまでのシマノの判断は的確だ)
クラ「ならば聞くが外に待機している第1王子の兵隊…彼をどうするべきだと思う?」
シマノ「…中に入れないという選択はございません」
シマノ「国王正規軍にも属している上級兵士が『護衛と監視』という国防法に則った目
的で来ております」
シマノ「拒否すれば国王軍によって王子・王妃・我々は拘束されます」
シマノ「拘束の際には第1王子の兵隊が付き添い…」
シマノ「一瞬のスキを見て心神耗弱した王妃が王子と無理心中を計ったというシナリオ
遂行が容易に想像できます」
シマノ「これだけ待たされても相手がアクションを起こさないのは…すべき事がはっき
り決まっているからと」
シマノ「普通でない状況が続く程、後のシナリオの布石となり彼らにとって好都合だか
らでございましょう」
クラ「…シマノ礼を言う。君の助言が必要だ。思った事は何でも言ってくれ」
ビル「クラピカそろそろ時間だぞ」
インターホン越しにバビマイナと接触するクラピカ
クラ「待たせてすまなかった。王妃が外出の準備をしていてね」
バビマイナ「…外出?」
クラ「これからチョウライ王子の部屋へ行く。勿論王子に直々に招かれての事だ。同行
するか?」
バビ「…いやチョウライ王子の領域内ならお任せしよう。私はこちらの室内で待機して
いる」
ビルを見つめるクラピカ
ビル「大丈夫だ。カンタンにはやられんさ」
ビル「クラピカ…目はそのままで行くのか?」
クラ「いやコンタクトを使う」
クラ「ツベッパ王子の兵から連絡が来たら『問題は解決した』と伝えてくれ」
クラ「交渉が早く済めば私がその連絡に出る」
部屋から出るクラピカとオイトワブル、見送るビルとバビマイナ
ビル「それでは行ってらっしゃいませ…」
バビマイナに対しビル「先に入れ」
通路を歩くクラピカがツェリードニヒの部屋の方を見つめる
クラ(あそこがツェリードニヒの居住区…)
チョウライの護衛による無線連絡「3名到着これより入室」
チョウ「ようこそ掛けたまえ」
2本のペットボトルを差し出すチョウライ
チョウ「好きな方を取ってくれ」
チョウ「無粋なもてなしですまないね。しかしこの方が余計な心配はせずに済むだろう
?」
オイト「お心遣い有難うございます」
ペットボトルを持つオイトの手が震えている
チョウ「さて早速だが情報をいただこうか」
クラ「ネンとは念力、つまり念じる事で発動する超能力の事です」
クラ「この能力を得ると通常視えないものが視えたり不可思議な力が出せたりします」
クラ「この力が使える者はごく少数です」
オイト(クラピカはおそらく私に向けて話している)
オイト(今…この状況で私がパニックを起こさないように)
チョウライの背後にいる念獣がまっすぐオイトを見据える
クラ「今回の継承戦は念能力を用いたサバイバルレースです」
クラ「無自覚ながら王子達にはそれぞれ念能力が授けられたのです」
チョウ「ほう…」
クラ「それが念の獣つまり念獣!先程の緊急放送で流されたワードです」
クラ「壺虫卵の儀が発動のきっかけだったと考えられます」
クラ「さて…ここからの情報は非常に重要で継承戦の結果を左右するに十分すぎるもの
…!」
チョウライの左右に2人の警護兵
右側にドゥアズル所属のスラッカ、左側にベンジャミン私設兵コベントバー
クラ「本当にこの場でお話しして宜しいでしょうか?」
考え込むチョウライ
次週へ
煽り:情報戦の様相!
先週13ヶ所に色々描き足しました。単行本では消すと思うので探して見て下さい<義博
>