374能力
ウェルゲー「ここか?1013号室だが………?」
ウェルゲー「外の様子?一体何を言っているんだ」
ウェルゲー「質問するのはこちらの方だ」
ウェルゲー「自分の立場をわきまえたまえ」
ウェルゲー「君は下位王子の委嘱警護兵でしかないのだぞ」
ハンゾー「クラピカ!やはり1013号室はもぬけの空だ!」
クラピカ(ハンゾーの話が正しいなら第13王子達は部屋ごと別の何処かにいる!!)
クラピカ(これが「避難」なのかそれとも「監禁」なのかはまだ判別不能……!!)
クラピカ(どちらにしろ早く伝えないと)
クラピカ(だがウェルゲー(コイツ)を介すと話が余計ややこしくなる気がする…)
クラピカ(ビスケに話を通すのが一番安全かつ早道なんだが……)
クラピカ(おそらく兵隊長(ウェルゲー)は念について殆ど何も知らない…!)
クラピカ(だが物言いから察するにそれを素直に認めるタイプではないな……)
クラピカ「どうか聞いて下さい!」
クラピカ「そこは既に何者かの念能力の影響下にあります!」
ウェルゲー「……」
クラピカ「そちらの居住区全体が別の場所に転移させられていると考えられます」
クラピカ「ハンター協会員の誰かに扉の外を確認させていただきたいのです!」
ウェルゲー「いいか、これ以上私を無視して荒唐無稽な主張を続けるなら宣戦布告とみ
なすぞ」
ウェルゲー「私を甘く見ない事だな。防衛に関して君の助言は無用!」
クラピカ「………」
クラピカ「失礼しました………」
ウェルゲー「……ふん。ようやくこちらの用件を言えるな…聞きたい事とは第12(モモ
ゼ)王子暗殺容疑者6名の現況だ」
ウェルゲー「容疑者が全員上位王妃の所属故、我々に情報が全く入ってこない…そこで
だ」
ウェルゲー「操作の進展状況を報告してもらいたい」
ウェルゲー「容疑者よりも下位の王妃に所属しているという点は君達も我々と同じだが
当事者ではない分、腹芸は有効だろう?」
ウェルゲー「上手く関係者にとり入って有益な情報を我々に提供すれば第12(モモゼ)王
子の警護を担当していた協会員をそちらに出向させてもいい」
クラピカ「大変に有難い申し出に感謝します…1つだけ宜しいでしょうか?」
ウェルゲー「何かね?」
クラピカ「第12(モモゼ)王子暗殺の実行犯について具体的かつ確実な情報を我々は既に
入手しております………!」
ウェルゲー「!」
ウェルゲー「それは…犯人の名前という事かね?」
クラピカ「はい」
クラピカ「犯人もそれを知った経緯も説明します。我々が望んでいるのは壺虫卵の儀の
平和的解決です」
クラピカ「そのために必要不可欠なのは王子同士の結託!」
クラピカ「現在我々は第3・第5・第9王子と停戦協定を結んでおり全王子に対して念能
力の情報と修得を呼びかけたのは御存知の通りです」
ウェルゲー「そこまで言うならばわかった」
クラピカ「!」
クラピカ「ありがとうございます」
ウェルゲー「これから協会員に扉の外を見てもらいその結果を君に報告する」
ウェルゲー「異常が認められた場合その対処法と暗殺実行犯の名前とを教えてもらおう
」
ウェルゲー「などと言うとでも思ったか!?」
ウェルゲー「私を甘く見るなと言ってるんだッッ」
クラピカ「………ッ」
ウェルゲー「まず1014号室で大量変死が起こり念とやらの情報が拡散したが協会員は口
を揃えて「念は存在するが修得していない者には視えない」と言う!」
ウェルゲー「それに付随してそちらが提案した念の講習会で又、死者が出た!」
ウェルゲー「果ては1013号室(こっち)で起きた事件について連絡したら「犯人を知って
いる」だと!?」
ウェルゲー「ここまでお前達に都合のいい様に話が続いている状況で「信用しろ」とは
な!!」
ウェルゲー「「家人が自ら家に招く」様に惑わすドラキュラ!!それ以外にお前をどう見
ろと言うのだ!!」
ウェルゲー「こちらから扉を開く事は決して無い!!」
ウェルゲー「それでも構わないならば犯人とやらを言ってみろ!!」
クラピカ「……」
クラピカ「わかりました」
クラピカ「犯人は第5(スィンコスィンコ)王妃の所属兵タフディーでした」
クラピカ「拘束房で自害し遺言に王子の寝室への侵入方法と自身の能力を秘密の暴露と
して記しています」
クラピカ「ちなみに事件当日タフディーはシフト上ベッドにいたはず」
クラピカ「これは部外者では知り得ない情報のはずです」
クラピカ「私が何の根拠も無く妄言を吐いているのではないという事は御理解いただき
たい」
クラピカ「第5・第8王子とさらに上位王妃・上位王子との力関係を考えると裁判も支障
なく進み程無く公式に暗殺犯として発表されると思われます」
クラピカ「その場合は単独犯として処理される公算が濃厚です」
クラピカ「上位王妃・上位王子が絡む程その傾向が顕著になるでしょう」
クラピカ「暗殺の連鎖は今のままでは止まりません」
クラピカ「どうか結託・同盟の件、御再考下さい」
ウェルゲー「ああ、大変参考になったよ」
ウェルゲー「ハンター協会員が壺虫卵の儀を利用し組織ぐるみでカキンを内側から崩そ
うとしているのではないか?」
ウェルゲー「その疑惑が深まりこそすれ払拭する材料は何一つ無いと言う現状確認のな
…!」
クラピカ「……大分頑なだな。自分以外信用していない印象だ」
ハンゾー「やはりか……ウェルゲーは最初から協会員を目の仇にしている感じがあった
」
クラピカ「居場所は不明だが連絡は取り合える事が分かった」
クラピカ「唯一事情を知る君にはむしろ1013号室(あちら)にいてもらいたい」
ハンゾー「休憩時間が終わればどの道オレは本体に戻れるだろう」
ハンゾー「その間、幽体の身を活かして色々調べてみる」
クラピカ「こちらの情報ソースを確認してこなかった点が逆に気になる…もしかしたら
内通者を疑っていてあえて触れなかったのかも知れない」
クラピカ「注意してくれ」
ハンゾー「十分あり得るな」
ハンゾー「現段階で即刻魔女狩りみたいなトコまではいかないとは思うが自重しとく」
ハンゾー「クラピカ、何か調べてほしい事はないか?」
クラピカ「私の方は大丈夫だ」
クラピカ「第13(マラヤーム)王子の安全の為、必要だと思う情報を優先して集めてくれ
」
ハンゾー「……」
ハンゾー(損な性格だな)
ハンゾー「じゃな」
サカタ「クラピカ」
サカタ「1013号室の「念による影響下」について現段階でわかっている事を教えてもら
おうか」
クラピカがバビマイナをチラ見、バビマイナはどうぞご自由にといった態度を取る
クラピカ「1013号室が人間ごと転移していて現在これが防衛か攻撃かは不明だ」
クラピカ「空間を区切り遮断する能力は放出系・具現化系の相反する能力者が得意とし
ている」
クラピカ「放出系は空間そのものを移動させる力に長けていて具現化系は空間内に様々
な法則やルールを作り込む事に長けている」
クラピカ(バビマイナは全く干渉してこなくなったな…戦略か、それとも暗殺者が見つ
かるまでは静観か…)
クラピカ「おそらく第13(マラヤーム)王子の念獣による防衛行為だと思うがこれからの
ハンゾーとの連絡がカギになる」
サカタ「了解した。経過はその都度教えてもらうぞ」
クラピカ「無論だ」
オイトとワブルを見守るビルと食事の用意をするシマヌの絵
出航から37時間30分経過
王子達の現在の兵数が見開きで紹介されている
ベンジャミン:私設兵13名、ウンマ所属兵9名(下位王子の監視)
カミーラ:私設兵12名(準協会員5名含む)、従事者7名、ドゥアズル王妃所属兵8名(下位
王子の監視)
チョウライ:私設兵15名(準協会員5名含む)、従事者3名、トウチョウレイ所属兵7名(下
位王子の監視)
ツェリードニヒ:私設兵15名(準協会員5名含む)、従事者5名、ウンマ所属兵9名(重複)
ツベッパ:私設兵14名(準協会員5名含む)、従事者5名、ドゥアズル王妃所属兵8名(重複
)
タイソン:私設兵5名、従事者5名、H協会員2名、カットローノ王妃所属兵6名(下位王子
の監視)
ルズールス:私設兵4名、ドゥアズル王妃所属兵6名(王室警護兵)、H協会員3名、従事者
1名、ドゥアズル王妃所属兵(重複)
サレサレ:私設兵5名、スィンコスィンコ王妃所属兵3名(王室警護兵)、従事者3名、ス
ィンコスィンコ王妃所属兵4名(下位王子の監視)
ハルケンブルグ:私設兵14名、ドゥアズル所属兵8名(重複)
カチョウ:セイコ王妃所属兵2名(王室警護兵)、H協会員3名、従事者5名、セイコ王妃所
属兵3名(下位王子の監視)
フウゲツ:セイコ王妃所属兵2名(王室警護兵)、従事者8名
モモゼ(死亡):セヴァンチ王妃所属兵1名(王室警護兵)、H協会員5名、従事者3名 ※全
員13王子(1013号室)へ移動
マラヤーム:H協会員5名、従事者3名
ワブル:H協会員2名、従事者1名
・私設兵・・・王子が独自の人脈で集めた兵隊。ただし第1王子の私設兵は正規国王軍
の資格を有する。
上位5人の私設兵は幼少から王子の為に身を捧げる訓練を受けており、士気も忠誠心も
強い。
・王妃所属兵・・・国王軍の中から各王妃に割り当てられた正規国王軍兵。
各王子の私設兵ほどには王子に対する帰属意識は強くないが王妃に対する忠誠は強い。
・H協会員・・・プロハンター。各王子単独の依頼によって身辺警護の任務につく。
基本専守防衛であり、依頼主の王子の要請であっても王子暗殺には加担しない。
・準協会員・・・各王子の私設兵と協会が連携し、居住区外を警備する人材を募り便宜
上期限付きのH協会員としたもの。
規定は守られず、準協会員も居住区を出入りしている。
従事者・・・兵士と兼任する者も、非戦闘員もいる。
従事者の申請人数が多い程居住区内に持ち込める家具や日用品などの荷物重量の上限が
増える=その分武器(武器携帯者分だけ至急)が減る
午前1時27分
ベッドに横になるフウゲツ(涙目)※前髪が下りていて可愛さ3割増し
彼女の手にはカチョウとのツーショットが表示されているスマホ
突然ベッド脇の壁に扉が浮かび上がりフウゲツは驚く
フウゲツ(何コレ?壁に突然扉が…!?)
フウゲツ(……でもこの扉…見覚えがある)
フウゲツ(小さい頃カーちんと遊んだアスレチック遊具、"魔法の抜け道(マジックワー
ム)"の入り口…!!)
フウゲツ「……」
ベッドに細工をしてまだ自分が寝ているように見せかけ、そのまま壁の扉の中に入って
いく
フウゲツが入ると扉は自然に消えた
フウゲツ(そうだわ!!)
フウゲツ(魔法のトンネル……!!あの頃私達はこれをくぐってどこにでも行けた!!)
目を涙で濡らしつつアルバムをめくるカチョウ
突然ベッドに穴が開き中からフウゲツが顔を覗かせる
唖然とする二人。カチョウは身振り手振りで音を立てないようにこっちに来るように伝
える
センリツ「!!」
センリツ(第10(カチョウ)王子の鼓動が跳ね上がった!?)
H協会員「気付いたか?」
センリツ「ええ!!」
センリツ「王子!!」
リョウジ「?」
センリツは天蓋越しにカチョウに話しかける
センリツ「第10(カチョウ)王子…大丈夫ですか?」
カチョウ?「何のこと?」
センリツ「第10(カチョウ)王子…どうか私達をもっと頼って下さい」
センリツ「貴方を御守りするのが私達の仕事です」
カチョウ?「そうね」
カチョウ?「「仕事」なんだからそれなりに頑張ってお金もらえばいいんじゃない?」
カチョウ?「その辺ウロウロして今みたいに私の心配するフリしてれば結構よ」
センリツ(本当に強いコ…)
センリツ(こうする事が自分の「使命」だと信じている鼓動(音))
センリツ「私は…自分の仕事に誇りを持っています」
センリツ「王子の様に…命を懸けて守りたい人は私生活で身近にいませんが」
センリツ「「誰かを守る事」が任務ならば、その為に身を捧げる覚悟はあるつもりです
」
カチョウ?「知った風な口きくのはやめて!」
カチョウ?「実の親に「兄弟同士で殺し合え」って言われた事ある!?」
カチョウ?「好きで命を懸けているわけじゃないから」
センリツ「……」
センリツ「おっしゃる通りですね」
カチョウ?「………」
カチョウ?「てか何で私が誰かの為やってるって思うの?」
センリツ(………この子には本当の事を話した方がいい)
センリツ「第10(カチョウ)王子、念能力…というものについて詳しく説明してもいいで
すか………?」
サレサレの念獣が煙を吐き続けている
リハン※セリフが抜けてた人(第8王子(サレサレ)の守護霊獣は操作系…!)
リハン(拡散式の誘導型で強制力は弱いが多くの人間を操る事が出来る)
リハン(断続的に吐き出している白い煙…あれを吸い込む程王子への好意が増すと予想
される)
リハン(王子の感度(テンション)によって煙の量や影響範囲に変化はあるが平均して半
径約7m…)
リハン(吸い込んだ煙が定数を超えると…信奉者の頭上に守護霊獣の分身が発生する…
!)
リハン(こいつらが別の誰かと一定時間過ごし又そいつに分身を作る)
リハン(つまり王子への好意を伝染させる"保菌者(キャリア)"となる…!)
リハン(念獣を増殖させる目的は大きく分けて3つ…!!)
リハン(①操り味方を増やすか)
リハン(②蝕み敵を減らすか)
リハン(③何かを徴集し術者あるいは念獣本体の力を増やすのか、のいずれかである事
が殆ど)
リハン(王子の性質上、望むのはハーレムだろう。故に仮説は高確率で正しいはずだ)
リハン(オレと同じシフトで一日16時間警護しているコロアブデ(コイツ)はほぼ無防備
に漂ってくる煙を吸っている…)
自分のところに向かってきた煙を軽く息を吹きかけ散らすリハン
リハン(第8王子(サレサレ)への忠誠心はほぼ0であろう第3王妃(トウチョウレイ)の警
護兵…コイツの頭上に何時間で分身が発生するか確認できれば)
リハン("異邦人(プレデター)"を開放させる…!!)
リハン(これが守護霊獣にも有効ならば…!!第1(ベンジャミン)様の勝利に大きく貢献
出来る!!)
"異邦人(プレデター)"
具現化系能力、術者(リハン)がターゲットを定め念を発動すると術者の体内で"異邦人(
プレデター)"が育ち始める
ターゲットの能力に関する術者の解析・理解が正しい程ターゲットの能力を凌駕する「
捕食者」つまり天敵として成長しやすい
その威力は術者が「ターゲットの能力を未知の状態で正しく予測する」程強くなるため
強化系や放出系のシンプルな攻撃に対しては無力である
1003号室
食事中のチョウライは床にコインが落ちた音を聞く
チョウライのやや後ろの当たりに一枚のコインが落ちている
チョウライ「?」
チョウライ「どうした落ちたぞ。拾いたまえ」
「や、あの…ですね」
「私達ではなく空中から…突然」
「突然コインが降って来ました………!」
「本当です」
「我々の目の前で突然コインが降って来ました」
(視えない者・知らない者にわざわざ情報を与える必要はない)
(確かにコインは空中から現れた)
(第3王子(チョウライ)の守護霊獣の口からな…)
コインを摘み不思議そうにするチョウライ
チョウライ「む…」
(そしてこのコインは昨日も出現していた…!)
(オレ以外誰も気づいていなかったがな…)
もう1枚のコインを後ろ手に隠し持っている
チョウライが見つめるコインの大きさはだいたい1円硬貨くらい
コインには数字の1と花の模様が刻まれている
おわり