[情報] 緒方恵美の、銀河で、ホエホエ。vol.67

作者: OGATA (HARUKA)   2007-07-06 07:32:12
◆◇ 「 緒方恵美の、銀河で、ホエホエ。」 ◇◆   2007年7月5日発行
                  vol.67「大人の愛」
 ライブハウスツアーが始まった!
 その初戦・大阪&名古屋から帰ってきて、今、この原稿に向かっている。
 「粉モンツアー」と呼んでいた前回ツアー(各地で旨いお好み焼きだの蕎麦だ
のを食べまくっていたので)に負けないくらい「リーズナブルグルメツアー」だ
ったので、そのあたりのネタは満載。本来なら、そんな話だけで一編書けてしま
う所だったのだが……正直、そんな余裕はなくなってしまった。
 ……壊れてしまったのだ。声帯が。
 未だかつてなかったくらいに……。
 ツアー初日の一週間くらい前から、やや、喉の調子が怪しかった。
 風邪のようなのだけど、当初他の症状は一切なく、、、医者に行く時間もなか
ったので、とりあえず薬局で引き始めに効くと言われた薬を買い、ひたすらイソ
ジンでうがいを徹底しつつ、仕事や用事をこなしていた。
 ところが、本格的にリハーサルに取り組み始めた5日前くらいから、むせるよう
な咳がとまらなくなり、扁桃腺が腫れて微熱がでるようになって、病院へ。
 「上気道炎」と診断された。
 メンバーは心配してくれたが、このくらいのことはごくたまにだがあったし、
喉はとても強い方だったので、発声法に少し気を遣えば大丈夫。逆に段々「歌う
カラダ」になってきて、いつも通りそのうち治る。そう思っていた。
 (実際そういう逆療法でいつも治してきていたのだ)
 なのでリハーサルもいつも通りに……バンドと一緒に初日のアタマからずっと、
最初から最後まで歌い続けるリハを、やり通してしまったのだ。
 ちなみに大概のボーカリストは、まず、そういうリハはしない。バックの演奏
を固めてから、最後に仕上げのように入ることが多い。ウチはただのバンド状態
なので(笑)、、、チームワークを固めるためもあるし、私の練習にもなるし、
音が速やかにキマルので、そういうやり方をずっととってきたのだった。
 でも、今回はなぜか治らなかった。
 日に日にひどくなってゆき、ついに出発の日まで引きずることに。
 どうしようと思っていたら、マネージャーが「ニンニク注射」なるものを勧め
てくれた。
 に、にんにく???
 打つの? 静脈にあの液体を、……直接??
 ……な、ワケもなく(笑)。
 ビタミンやらなんやら、要はニンニクと似た成分を注射することで、体内を活
性化させて元気にするというものらしく、アスリートや芸能人もたくさん利用し
ているらしい。特に、ココは肝! という日の直前にはテキメンだとか。
 その元祖と言われる病院で、ピンク色の大量の液体を目にした時は、正直ビビ
ッた。が、恐る恐る打ってみると、効果はスグに表れた。
 カラダが内側から、じわじわ、妖しく熱くなってきたのだ……大興奮!
 私が男なら、きっと「勃っていた」に違いない(笑)。
 EDにも効きそうなニンニクパワー。大丈夫、これならイケる!
 そんなこんなで確信した私は元気を取り戻し、絶好調とは言えないまでも、と
りあえず何とか無事に、初日・大阪公演を乗り切ったのだった。
 その日も大事をとって、酒・タバコは控えめに。乾杯のみでチャッチャと済ま
せ、ひとり早々に撤退し、マッサージで疲れをほぐしてから早めに寝た。
 やや腫れてきた喉を冷やしたくて、「熱さまシート」を張りながら……。
 ……その、翌日。
 朝起きて、声を出しつつ大きくノビをしようとして、気がついた。
 ……声が、でない。
 口からこぼれでるのはスカスカのウィスパーボイスだけ。どんなに頑張って力
んでも、実音は一音もでてこない。まるで喉に何か詰め物をしたかのようだ。
 ……真っ青になった。
 ニンニク注射で急にパワーをつけた反動なのか、それとも熱さまシートで冷や
してしまったのがいけなかったのか、それ以外なのか、わからない。
 ともかく突然、まったく声が出なくなってしまったのは、事実だった。
 その日は奇しくも日曜日。名古屋ELLでの公演日。
 午前中に大阪のホテルからバンで移動し、午後から搬入・リハーサル。17時30
分開場・18時開演、というスケジュールだった。
 メンバーにはジェスチャーとウィスパーで告白。移動の車の中ではひたすらメ
ールを打ちまくり、東京にいるスタッフや声のスペシャリストの知人に、休日診
療してくれる名古屋の病院の在処や、考えられる対応策を聞きまくった。
 名古屋到着後、搬入はメンバーに任せて、すぐに病院へ。
 すがるような気持ちで診てもらったのだが、、、愕然とした。
 典型的な重度の声帯疲労で、2~3週間は治らないと言われてしまったからだ。
 細菌がついているワケでもないので、直接注射も無意味だとか。せいぜい、通
常より多めの吸引をするくらいしかないのだ、と。
 そして、それも、……効かなかった。
 ボイストレーナーの先生関係経由で症状を話し、メールのやりとりをした有名
なお医者様にも、その状態ではどうにもできないと言われてしまった。
 声帯専門でない当直医相手では、どこの病院へ行っても同じだろうと。
 それどころか、ヘタな注射などしたら声が変わってしまう恐れがある。
 またそのまま公演へ突入しても、その状態の声帯では、破れて、大出血する可
能性が高い。その上それも、後々の声変わりに発展する可能性がある。
 今できることは、市販の吸入器等で開演ギリギリまでのどを潤し、僅かな腫れ
のひきに賭けるしかない。
 ……そう、言われてしまったのだった。
 それからが大変だった。
 とりあえず速効で吸入器を購入し、当日来ている中から比較的上手いスタッフ
に背中上部のマッサージを受けつつ、吸入を続けつつ、筆談とジェスチャーで緊
急ミーティング。メールもあちこち打ちまくった。
 現地の、そして東京のスタッフは、コマのように動いてくれた。
 ひと言の文句も言わずに、最悪の場合(興行中止&払い戻し)も視野に入れつつ、
あらゆることを検証し、検討し、押しつけることなく私に提案し続けてくれた。
 メンバーも全員、終始穏やかで、落ち着いていた。
 何がどうなっても心配するな、対応できる、大丈夫と笑顔で言い続け、励まし
続けてくれた。どうなってもいいようにと、やることはないかもしれない楽曲ま
で、リハーサルを続けながら……。
 いろんな人たちの想いに、愛に、胸が熱くなった。
 シューシューとうなり続ける吸入器に張り付き、その湯気に包まれながら、影
に隠れてこっそり泣いた。
 すべては私の過信・慢心からきたこと。
 ごめんなさい……。
 出ない声で口をつくのは、謝罪の言葉ばかり。
 でも、そんなこと言ってる場合じゃない。
 今一番、みんなのために選ぶべきことは、何?
 何をするのが、現状の中での最良策?
 浮かんでくるのは、メンバーの笑顔。スタッフの笑顔。
 そして、楽しみに足を運んでくれているであろうオーディエンスのみんなの、
幸せいっぱいの、はじけるような満面の笑顔……。
 ……結果、、、……私は、「ヤル」と決めた。
 これさえ終わればどうなってもいいという投げやりな気持ちでは決してなく。
 ……できる。きっと。
 そう、信じたから。
 帰宅後、いつもの病院(声のスペシャリストへの繊細な治療ができる病院)へ
行って、診てもらった。
 「声帯結節」(コブ)ができていると言われた。
 名古屋の病院では、コブやポリープはなく、綺麗に腫れてしまっているだけだ
と言われていたので、どうやら名古屋ライブで作ってしまったようだった。
 (負荷をかけすぎれば一晩でもできることがあるらしい)。
 声帯自体もブヨブヨに腫れて表面が薄く、一触即破裂の危険な状態なのだとか
……本来なら完治するのにかなり時間がかかるらしいのだが、事情を話した所、
先生は、できることをフルコースでやり、何とか一週間で声がでるように努力し
ましょうと言ってくれた。
 とりあえずは今週一杯通いつめ、吸入・注射・点滴をしつつ、ステロイド系の
強い薬を処方して頂く。うまくいけば、来週半ばにはレコーディングもできる状
態になれるかもしれない、と。
 ライブ中盤戦にも何とか間に合うかもしれない。
 ホッとした。
 ホッとして、……涙が出た。
 今回のステージは、一生忘れられないステージになった。
 本当はこんなこと公にしなくても…とも思うが、自分への戒めのためにも書き
留めておこうと思う。
 いつも思っていたことではあったけれど、今回ほど深く、メンバーの、スタッ
フの、愛を実感した日はなかった。
 現実と想いの狭間で、たくさんの方々の、大きな、大人の愛を知ることができ
た。
 そんな彼ら・彼女たちに少しでも報いるためにも、そして、あのステージを客
席から一緒に作り、大声で笑いながら、泣きながら、応援してくれたみんなのた
めにも、、、
 ……もっと大きく、強い自分になりたい。
 ならなければ。
 そう、心から思った。
 まずはアタリマエだが、最低でもツアー中盤戦までは、禁酒・禁煙!
 この二週間、モウーーーレツに、ストイックに過ごす!
 リハビリも頑張って、少しずつ治して、、、そして。
 すべては、「次」のステージに!

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